不妊治療の基礎知識:ステップアップ治療とは?検査から体外受精までを解説


「そろそろ子どもが欲しいな」そう考え始めたものの、なかなか授からない…と悩んでいらっしゃる方、少なくないのではないでしょうか。もしかしたら、それは不妊治療を検討するタイミングかもしれません。不妊治療と聞くと、漠然とした不安を感じる方もいるかもしれませんが、今は多くの選択肢があり、安心して進められるようになっています。

この記事では、不妊治療の基本的な流れである「ステップアップ治療」について、最初に受ける検査から、治療の最終段階となる体外受精までを、わかりやすく解説していきます。

不妊治療の「ステップアップ」ってどんなこと?

不妊治療には、段階的に治療法を高度なものへと移行していく「ステップアップ」という考え方があります。これは、心身や経済的な負担を考慮しながら、より効率的に妊娠の可能性を高めるための進め方です。いきなり高度な治療に進むのではなく、身体への負担が少ない治療から始めて、必要に応じて次のステップへ進んでいきます。

まずはここから!不妊治療の「基本の検査」

不妊治療を始めるにあたり、まずは原因を探るための様々な検査が行われます。ご夫婦それぞれが検査を受けることが大切です。

女性の検査

  • 基礎体温測定: 毎日の体温の変化から排卵の有無やホルモンバランスの目安を把握します。

  • 血液検査(ホルモン検査・感染症検査など):

    • 女性ホルモン検査: 月経周期に合わせて、排卵や子宮内膜の状態に関わるホルモン(FSH、LH、E2、P4など)の数値を調べます。

    • AMH(抗ミュラー管ホルモン)検査: 卵巣に残っている卵子の目安となる「卵巣予備能」を調べます。

    • 感染症検査: クラミジアやB型肝炎、C型肝炎、HIVなどの感染症がないかを確認します。

  • 経腟超音波検査: 子宮や卵巣の形、卵胞の発育状況、子宮筋腫や卵巣嚢腫などの有無を確認します。

  • 子宮卵管造影検査: 子宮の中に造影剤を注入し、子宮の形や卵管が詰まっていないか、または狭くなっていないかなどをX線で確認します。

  • 子宮鏡検査: 子宮の内部に細いカメラを入れて、ポリープや癒着などがないか直接確認します。

  • 頸管粘液検査・フーナーテスト: 排卵期の子宮頸管粘液の量や性状、その中での精子の動きなどを確認します。

男性の検査

  • 精液検査: 精子の数、運動率、形態などを調べます。不妊の原因の約30~40%が男性側にあると言われており、非常に重要な検査です。

  • 血液検査(ホルモン検査・感染症検査など): 必要に応じてホルモン値や感染症の有無などを確認します。

これらの検査によって、不妊の原因がある程度特定され、次の治療ステップへと進んでいきます。

不妊治療の「ステップアップ」具体的に解説!

検査結果に基づき、医師と相談しながら治療を進めていきます。

ステップ1:タイミング法

  • どんな治療?

    超音波検査や尿検査でより正確な排卵日を予測し、その排卵日に合わせて夫婦生活を持つように指導する治療法です。必要に応じて、排卵を促す排卵誘発剤が使われることもあります。

  • 費用: 比較的安価で、保険適用となる場合が多いです。

  • どんな人に向いている?

    自然妊娠に近い方法で、身体への負担も少ないため、不妊治療の最初のステップとして選ばれることがほとんどです。

ステップ2:人工授精(AIH)

  • どんな治療?

    タイミング法で妊娠に至らない場合や、精子の数が少ない、動きが悪いといった軽度の男性不妊、または性交が困難な場合などに検討されます。排卵日に合わせて、採取した精子の中から良好なものを選び、細いチューブを使って直接子宮内に注入します。

  • 費用: タイミング法よりは高くなりますが、保険適用となります。1回あたり数万円程度が目安です。

  • どんな人に向いている?

    タイミング法で結果が出ない方、軽度の男性不妊の方などが対象になります。一般的に、人工授精を3~5回程度行っても妊娠に至らない場合に次のステップを検討します。

ステップ3:生殖補助医療(ART):体外受精・顕微授精

タイミング法や人工授精で妊娠が成立しない場合、あるいは両方の卵管が詰まっている、抗精子抗体があるなど、最初から高度な治療が必要と判断される場合に**生殖補助医療(ART: Assisted Reproductive Technology)**へとステップアップします。これは、体外受精や顕微授精、それに伴う胚凍結や胚移植といった高度な技術を要する治療の総称です。

体外受精(IVF)のプロセスと費用

体外受精は、卵子と精子を体の外で出会わせる治療法です。

  1. 排卵誘発: 複数の卵子を育てるために、排卵誘発剤を投与します。

  2. 採卵: 超音波で卵巣の状態を確認しながら、成熟した卵子を体外に取り出します。麻酔下で行われることがほとんどです。

  3. 採精: 採卵と同時に精子を採取します。

  4. 受精: 培養皿の中で卵子と精子を一緒にし、自然に受精させます(体外受精)。

    • 顕微授精(ICSI): 精子の運動性が極端に低い場合や、体外受精で受精しない場合に、卵子の中に直接精子を注入して受精を促します。

  5. 培養: 受精した卵子(受精卵)を数日間培養し、分割が進んだ胚(初期胚または胚盤胞)へと育てます。

  6. 胚移植: 育った胚の中から良好なものを選び、子宮内に戻します。

  7. 胚凍結保存: 移植に使わなかった余剰な良好胚は、次回以降の移植のために凍結保存することが可能です。

  • 費用:

    体外受精は、一般不妊治療に比べて費用が高額になります。2022年4月から保険適用が拡大されましたが、採卵数や培養方法、凍結の有無、使用する薬剤などによって費用は大きく変動します。

    • 保険適用: 治療開始時点の女性の年齢が43歳未満であれば、回数制限(40歳未満は1子につき通算6回まで、40歳以上43歳未満は1子につき通算3回まで)がありますが、保険適用となります。多くの部分が3割負担となり、1回の体外受精サイクル(採卵から胚移植まで)で15万円〜30万円程度が目安となることが多いです。

    • 自由診療・先進医療: 保険適用外の治療や、保険適用された治療と併用する**「先進医療」**は全額自己負担となります。先進医療には、高額な検査や特別な培養技術などが含まれることがあり、数万円から数十万円かかる場合もあります。

    • 高額療養費制度: 保険診療で行われた不妊治療費は、高額療養費制度の対象になります。これは、医療費の自己負担額が一定額を超えた場合に、その超えた分が払い戻される制度です。所得や年齢によって上限額は異なりますが、家計の負担を軽減することができます。

体外受精の成功率

体外受精の妊娠率は、女性の年齢に大きく影響されます。

  • 20代:40~50%程度

  • 30代前半:40%台

  • 30代後半:約30%

  • 40歳以上:10~20%程度

これは1回の胚移植あたりの妊娠率の目安です。複数回の移植を重ねることで、累積妊娠率は上がっていきます。



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不妊治療、あなたに合った進め方を見つけよう

不妊治療は、身体的・精神的・経済的に負担がかかることもあります。しかし、様々な治療法が確立されており、多くの方が妊娠という目標に向かって進んでいます。

大切なのは、ご夫婦でよく話し合い、医師と相談しながら、あなたの状況や希望に合わせた最適な治療計画を立てていくことです。不妊治療専門のクリニックでは、カウンセリングも受けられる場合が多いので、不安なことや疑問に思うことがあれば、積極的に相談してみましょう。

希望を持って、一歩踏み出してみてくださいね。

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