「書類送検」と「逮捕」ってどう違うの?刑事手続きの基本をわかりやすく解説


ニュースで事件報道を見ていると、「〇〇が逮捕された」という報道の後に、しばらくして「〇〇が書類送検された」といった言葉を聞くことがありますよね。どちらも何となく「警察沙汰になった」という意味合いで使われますが、実はこの「書類送検」と「逮捕」は、刑事手続きの全く異なる段階と意味合いを持っています。

この二つの違いを正確に理解しておくことは、もしもの時や、報道を正しく理解する上で非常に重要です。この記事では、「逮捕」と「書類送検」のそれぞれの意味と、刑事手続きにおける位置づけ、そして具体的な流れについて、専門用語を避けながらわかりやすく解説していきます。


1. 「逮捕」とは?身柄拘束を伴う強制的な捜査

まず、「逮捕」についてです。逮捕とは、被疑者(犯罪を犯したと疑われている人)の身体を一時的に拘束し、逃亡や証拠隠滅を防ぎながら、取り調べなどの捜査を進めるための強制処分です。

逮捕の目的

  • 逃亡の防止: 被疑者が逃げ出すのを防ぎます。

  • 証拠隠滅の防止: 証拠を隠したり、関係者に口裏合わせをさせたりするのを防ぎます。

  • 取り調べの実施: 必要な取り調べを確実に行うためです。

逮捕の種類

逮捕には主に以下の3種類があります。

  1. 通常逮捕: 裁判官が発行する逮捕状に基づいて行われる逮捕です。ほとんどの逮捕がこれにあたります。

  2. 現行犯逮捕: 犯行中や犯行直後の犯人を、令状なしで逮捕することです。一般の人でも行うことができます(私人逮捕)。

  3. 緊急逮捕: 死刑、無期、長期3年以上の懲役・禁錮にあたるような重大な犯罪を犯したと疑うに足りる十分な理由があり、かつ急速を要するため逮捕状を求める時間がない場合に、令状なしで行われる逮捕です。逮捕後、速やかに裁判官の逮捕状を求める手続きが取られます。

逮捕後の流れ(最大72時間)

逮捕されると、原則として最大48時間以内に警察から検察へ事件と身柄が送られます(これを「送致(そうち)」または「送検(そうけん)」と言います)。検察官は送致を受けてから24時間以内に、被疑者を釈放するか、裁判所に**勾留(こうりゅう)**を請求するかを判断します。

つまり、逮捕されてから最長で**72時間(3日間)**は身柄が拘束される可能性があるということです。この期間に、警察や検察による集中的な取り調べが行われます。


2. 「書類送検」とは?捜査資料を検察に送ること

次に、「書類送検」についてです。書類送検とは、警察が捜査を終えた後、被疑者の身柄を拘束することなく、事件に関する捜査書類や証拠品だけを検察庁に送ることを指します。正式には「書類送致(しょるいそうち)」と呼びます。

書類送検が行われるケース

書類送検は、主に以下のようなケースで行われます。

  • 逮捕の必要がない場合: 犯罪の重大性が低く、逃亡や証拠隠滅のおそれが少ないと判断された場合。

  • すでに釈放されている場合: 一度逮捕されたものの、その後の捜査で身柄拘束の必要がなくなったとして釈放された後、捜査が進んでから書類送検される場合。

  • 在宅捜査の場合: 逮捕されずに、通常の生活を送りながら警察の取り調べを受け、捜査が進められる場合。

書類送検の目的

  • 検察官の判断を仰ぐ: 警察がまとめた捜査結果を検察官に引き継ぎ、起訴(裁判にかけること)するかどうか、不起訴(裁判にかけないこと)にするかどうかを判断してもらうためです。

書類送検後の流れ

書類送検された場合、被疑者の身柄は拘束されていないため、通常の生活を送りながら検察庁からの連絡を待ちます。

  • 検察官による判断: 検察官は送られてきた書類を検討し、必要であれば被疑者を呼び出して取り調べを行います。

  • 最終的な処分: 最終的に、検察官は以下のいずれかの処分を決定します。

    • 起訴: 刑事裁判にかけること。多くは略式起訴(罰金刑が科される書面手続き)となる場合が多いですが、公判請求(正式な裁判)もあります。

    • 不起訴: 裁判にかけないこと。証拠不十分や情状を考慮した場合など。

    • 起訴猶予: 犯罪は成立するが、犯人の性格、年齢、境遇、犯罪の軽重などを考慮して起訴を見送ること。


「逮捕」と「書類送検」の決定的な違いまとめ

項目逮捕(たいほ)書類送検(しょるいそうけん)
身柄拘束あり(強制的に身体を拘束)なし(通常の生活を送れる)
目的逃亡・証拠隠滅の防止、取り調べの確実な実施捜査書類を検察に引き継ぎ、処分の判断を仰ぐ
タイミング捜査の初期段階(緊急性がある場合)警察の捜査が完了した後
行う主体警察官、検察官(現行犯逮捕は一般人も)警察から検察へ
報道大々的に報道されることが多いニュースで報じられることは少ないが、事件が動いた証拠
今後の手続き逮捕後、送致(送検)を経て勾留の可能性あり。その後起訴・不起訴へ検察官が捜査書類を検討し、起訴・不起訴を判断

補足:混乱しやすい「送致」「送検」について

「送致(そうち)」は、警察から検察へ事件を送ること全般を指す法律用語です。「書類送検」は、この「送致」のうち、被疑者の身柄を伴わない場合を指す、報道などでよく使われる俗語的な表現です。

一方で、逮捕後に身柄とともに事件が検察に送られる場合は、単に「送致」と呼んだり、「身柄送検(みがらそうけん)」と呼んだりすることもあります。

したがって、

  • 逮捕:身柄拘束

  • 身柄送検(送致):逮捕された状態のまま、身柄と書類が検察に送られる

  • 書類送検(送致):身柄は拘束されず、書類だけが検察に送られる

という関係性になります。


まとめ:正しく理解して、報道を見極めよう

「逮捕」は、その場で身柄が拘束され、一時的に自由が奪われる強制的な手続きです。一方、「書類送検」は、警察の捜査が一段落し、その結果を検察に引き継ぐ段階を指し、身柄の拘束は伴いません。

これらの違いを理解することで、ニュース報道の内容をより正確に把握できるようになります。もしご自身や大切な人がこのような状況に巻き込まれてしまった場合は、速やかに弁護士に相談し、適切なアドバイスを受けることが非常に重要です。

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