退職金とiDeCoを同時にもらうのはNG?「退職所得控除」をフル活用する受取時期の正解
iDeCo(個人型確定拠出年金)を運用している方にとって、最大の関心事は「いつ、どうやって受け取るのが一番お得か」という出口戦略でしょう。特に、長年勤めた会社から出る「退職金」がある場合、受け取り時期の重なりが税金に大きな影響を与えます。
「同時にもらえば手続きが一度で済む」と安易に考えると、本来払わなくてよかったはずの税金を数十万円単位で差し引かれることになりかねません。
この記事では、退職金とiDeCoを同時期に受け取る際のリスクと、税制優遇枠である「退職所得控除」を最大限に引き出すための「受取時期の正解」を徹底解説します。
1. なぜ「同時受け取り」は慎重になるべきなのか?
最大の理由は、iDeCoの一時金と会社の退職金は、同じ年に受け取ると「合算」して税金が計算されるからです。
退職所得控除の仕組みをおさらい
退職金にかかる税金は、他の所得(給与など)とは別に計算される「退職所得」として扱われます。その計算式は非常に優遇されています。
退職所得 =(受取額 - 退職所得控除額)× 1/2
この「退職所得控除額」は、勤続年数(iDeCoの場合は加入期間)が長いほど大きくなりますが、同じ年に両方を受け取ると、この控除枠を分け合う形になり、枠を超えた分に対して課税されてしまうのです。
2. 賢い出口戦略のカギ「5年・15年・20年」のルール
退職金とiDeCoの受け取りには、税務上の「重複期間の調整」という複雑なルールがあります。これまでは「5年空ければOK」と言われてきましたが、制度改正により状況が変わりつつあります。
基本の戦略:iDeCoを先に、退職金を後に
もっとも効率的とされるのが、**「iDeCoを先に一時金で受け取り、その後に会社の退職金を受け取る」**という順番です。
これまでのルール(5年ルール):
iDeCoを先に受け取り、その5年以上後に会社の退職金を受け取れば、それぞれの控除枠をフルに(重複調整なしで)使うことができました。
2026年以降の注意点(10年・20年ルール):
法改正の影響により、受取の間隔を**10年以上(または状況により20年)**空けないと、控除枠の再計算(減額)が行われるケースが出てきます。
逆に「退職金」を先に受け取る場合は?
会社の退職金を先に受け取った場合、iDeCoを「重複調整なし」で受け取るためには、なんと**「20年」の間隔**が必要になります。多くの人にとって20年空けるのは現実的ではないため、「iDeCoを先、退職金を後」にするのが鉄則と言われる理由です。
3. 具体的な「受取時期」の正解パターン
ご自身の退職時期や資産額に合わせて、以下のパターンを検討しましょう。
パターンA:退職金もiDeCoも控除枠内に収まる場合
【正解】同時受け取りでも問題なし
両方を合算しても、自分の「退職所得控除額」の合計以下であれば、税金はゼロです。この場合は、手続きの簡便さを優先して同時期に受け取っても損はしません。
パターンB:合算すると控除枠を大きく超える場合
【正解】iDeCoを60歳で「一時金」受取 + 退職金を65歳以降に受取
iDeCoを早めに一時金でもらい、退職金との間隔を空けることで、税負担を最小限に抑えます。2026年以降の改正を考慮すると、できるだけ間隔を長く(理想は10年以上)空ける設計が推奨されます。
パターンC:退職金が非常に多い場合
【正解】iDeCoを「年金形式」で受け取る
退職金だけで控除枠を使い切ってしまうなら、iDeCoは「一時金」ではなく「年金(分割)」として受け取るのが賢明です。これにより「公的年金等控除」の枠を利用でき、退職金にかかる税金との衝突を避けられます。
4. 失敗しないためのチェックリスト
出口戦略を立てる際に、必ず確認すべき項目をまとめました。
就業規則の確認: 自分の会社の退職金が「いつ」「いくら」出る見込みかを確認する。
iDeCo加入期間の確認: 加入期間が長いほど、控除額が増えます。60歳以降も加入を続けるか検討しましょう。
社会保険料の考慮: 「年金形式」で受け取ると、所得が増えることで国民健康保険料や介護保険料が上がる可能性があります。「手取り額」でシミュレーションすることが重要です。
5. まとめ:一番の損は「何も知らずに」受け取ること
iDeCoと退職金の受け取り方は、パズルのようなものです。
原則: iDeCoを先に、退職金を後に。
注意: 2026年からの「受取間隔」の延長に備える。
裏ワザ: 控除枠が足りないなら「年金形式」を組み合わせる。
「いくら増えたか」と同じくらい「いくら残せるか」は重要です。60歳が近づいてから慌てるのではなく、今のうちから自分にとっての「最適解」をイメージしておきましょう。
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